お見合いは未経験
その後は、出向にせよ、再雇用にせよ、エグいくらいに給与が下がる、と聞いている。

正直、金には困っていないが、出世のみに汲々とすることを考えると、今はそこだけに興味があるわけでもない。

今までは、活躍が認められて、結果として出世してきたのだと思っていたが、現状を鑑みると、迷いが生じるところなのは間違いなかった。

「成嶋さんのいない、銀行…ですか…」
「まあまあ、取引が無くなるわけじゃねーし。大事なお客様ですよ?言っても、グループ会社ではあるしな。」
「でも、確かに、そちらの方が成嶋さんに向いている、とは僕も思っていました。銀行もなかなか粋な配置をするものだと。」

「異端児でもあったしな。」
「そんな…」
「実際そうだぞ。扱いに困ってたんじゃないか?たまたま、お前がいた時は上手く回ってたけど。あれはチームが良かっただけだ。」

──きっと懐かしくなる。

昇進して、支店を離れる時そう思った。
「ほんの1年くらい前のことなのに、懐かしく感じるものですね。」
「そうだな。」

「いろいろ、考えます。」
「うん。オレはそんな決断したけど…。お前はどこでもやっていけるよ。ここに残ったって、支店長クラスまで行けると思うしな。トラストに移ったって、活躍出来るだろう。」

「そう言えば、成嶋さん、支店にいた時からご存じでしたか?」
「お前の家のこと?」
< 135 / 190 >

この作品をシェア

pagetop