お見合いは未経験
支店にいた時から総合提案に、定評のあった成嶋だ。
コンサルティングは向いている、と思う。
むしろ、コンサルティングこそ、天職のような人だ。

「うちの銀行の伝説のお二人ですよね。」
そう柳田が称すると、
「なんの伝説だよ。」
と成嶋は笑っている。

打ち合わせでノートを出す時に、左手の指輪が見えた。
「成嶋さん、指輪?」
「ああ、結婚したからな。」
成嶋は左手を広げて、その指輪を見せる。

「羽村さん、ですか?」
「他にいねーでしょ。あいつも今は成嶋葵だよ。オレの転勤決まって、すぐ籍入れようぜってなってさ。仕事も頑張ってるよ。オレの悪評にも負けず。」
笑ってはいるが、この人の怖さは十分過ぎるほど分かっている。

支店を出てから成嶋のいた1課が『チーム成嶋』として、他のエリアにも名前を轟かせていたと改めて知った。
同じ支店で、中にいたら気付かないことだ。

羽村はそのチーム成嶋の中にいた女子行員で。
榊原は彼女にほのかな想いを寄せていたけれど、気付いたら、成嶋に攫われていた、という経緯がある。

成嶋が言うには今は、結婚して苗字も変わっている、とのことだが。
葵になにかあれば、成嶋がキレることは間違いない。

成嶋は怒らせると怖い相手だ。
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