お見合いは未経験
「不満なんて、ないですよ。むしろ、今のところに配置して頂いて感謝してるくらいで。オレ、ここでやりたいなぁって思っちゃったんですよね。」
「いや、でもこういう実績作られると今度から出向させられなく…」

知らんがな?

「オレ、関係ないっすよね。仕事選ぶのは働く人でしょ。オレがしたい仕事すんのに、何か言われる筋合いあるんですかね?」

キレさせんなよ?マジで。

「気持ちが変わることは…」
「ないですよね。まあ、今のやり取りで一切の未練はなくなりましたけどね。」
はあ、と人事部長が大きなため息をつく。

役職者の退職は、人事には痛いことは分かるが、だからと言って、人生を左右するほどのことはない。
むしろ、今しなければ後悔すると思うから。

後悔はしたくない。

「ちゃんと慰留頂いたことは記録に残しますから。オレが強引に退職した、でいいじゃないですか。」
「でも、成嶋くん…」

「部長、お世話になりました!オレ、銀行員なって良かったって、思ってますよ。でも、もうやりたいこと我慢したくないです。」
「分かった。これ以上は引き止めない。」

新天地で頑張って欲しい。
最後にそう言われて。

最初からそう言えねーかなぁ…とちょっと思った成嶋なのだ。
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