お見合いは未経験
スタッフのテンションの高さは、つい、そんなことも疑いたくなってしまう感じだ。
まあ、もちろん、真奈も見たいけれど。
だって、絶対似合うと思うのですもの!

試着室から出てきた貴志に、一瞬サロン内で黄色い声が上がったと思ったのは、気のせいだろうか…。

シルクの落ち着いたツヤ感のある素材のタキシードは普段、貴志が着ない素材なだけに特別感があって、良い。

しかも、貴志のノーブルな雰囲気には、やはりタキシードがとても似合うのだ。

はうぅ…ステキすぎる…。
つい、真奈はうっとりと見とれてしまった。

「シャツがしっくりこないな…。」
タキシードの袖から出ているシャツの具合が気になるらしく、伏し目がちに袖を直す姿が、もう絵になり過ぎて。

「真奈…どう思…真奈。なんて目で見てるの。」
「だって…。」

今、ここにいる女子は、みんなそんな目になっていると思いますっ!

その後、色打掛は良い意匠のものがあったので、それに決め、真奈と母、貴志の3人で食事に行くことになった。

「お忙しかったんでしょ?」
母の言葉に貴志が苦笑している。

「本当にすみません。期末の退職を控えてますしね。退職の件も、まだオープンにしていないので、数字を部下に作ってやりながら、退職の準備も兼ねて、なので、とてもばたばたしてしまって。」

「この子、あなたに会えなくて、しゅんとしてしまって。」
「お母様っ!」

確かに事実ですけど!
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