お見合いは未経験
「そうなの?」
貴志にくすりと笑われて、母には内情をバラされるし、真奈は恥ずかしくなった。

「本当ですけど、大丈夫です。お忙しいのは分かっています。」
「僕は、顔が見られなくて、とても寂しかったよ。」

貴志は、サラリとそういうことを言うので、真奈はいつもどきっとする。
そして、この人の前では正直でいていいんだな、思うのだ。

「お義母様、よろしいですか?」
「ええ、どうぞ。」

何なのでしょう、この、仲良さげな雰囲気。
母もにこにこしている。
「真奈、渡したいものがあるんだ。」
「はい?」

かた、と貴志がテーブルに置いたのは2種類の鍵。
「これが、オートロックとエレベーター用。こっちが玄関。」

え?

「マンションの鍵だよ。」
「貴志さんがお父様に言って下さって。お式の準備もあるでしょ。少し早いけど、一緒に住んではどうか、と。」

「え?!」
「許可は頂いたよ。」

どうしよう!頭が真っ白なんですけど…。

「真奈?ドレッサーとか、女性に必要なものもあるでしょう?今度買いに行こうと思っているけど、聞いている?真奈?」
「は…い。」
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