お見合いは未経験
「ホントにご馳走になってしまって、いいんですか?」
店の外に出たら、柳田がもじもじしている。
そう思うのも、無理はない店構えではあったが。

あははっと成嶋は柳田の心配を笑い飛ばした。
「お前みたいなガキに、心配されるよーな稼ぎじゃねーよ。大丈夫、榊原にはちゃんともらうから。今度のセミナー、よろしくな。」

ありがとうございます、と柳田はペコペコしながら帰って行った。

「お前は、もう1軒付き合うよな?」
はいはい、そんな気はしました。

2軒目に2人で入ったのは、成嶋が知っている、と言う裏通りのバーだった。
ジャズが流れていて、静かにグラスを傾けるような店。
榊原は成嶋のその、引き出しの多さに驚く。

カラン、とドアの音をさせ中に入ると、ほの暗い店の端のテーブルを成嶋が笑顔で指差した。
どうぞ、とカウンターのバーテンダーに手で示される。

「いろいろ、知ってますね。」
「まあ、付き合い多くて。」

いらっしゃいませ、と密やかにオーダーを取りに来たウエイターに、成嶋はバーボン、ロックで、銘柄はお勧めで、と頼んでいるのが見えた。
同じのでいいよ、と榊原も伝える。

改めて、乾杯、とグラスを軽く合わせる。
そもそも、ぐいぐい飲む種類の酒ではないので、軽く口をつけた。

うん。美味しいな。
鼻から抜けるアルコールの感じがとても良い。

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