お見合いは未経験
「は…、ごめんなさい…、お待たせ…して…」
「時間には間に合ってるんだから、そんなに急がなくて大丈夫だよ。」
「でも、姿が見えたので、待たせてしまったら、申し訳ないと…。」

貴志の腕の中で真奈は軽く呼吸を整えている。
それでも、女性とは悠々来るものかと貴志は思っていた。

申し訳ないと言われて、こんなに一生懸命になってくれた女性はいない。
貴志は、真奈にふっと微笑みかけた。

「僕は真奈がケガしたりしたら、困る。遅れてもいいんだよ。連絡さえくれたら。」
「そう…なんですね。」
真奈は首を傾げている。

うーん。本当に箱入りらしい。
「ワンピース、可愛いね。」
「お食事、とおっしゃってたので。」
やはり、顔を赤くして俯いてしまう。

「真奈。」
「はい…」
真奈がちらりと貴志の顔を見た。
分かってはいるんだな、と思う。
「慣れてね?」
「は…い。」

どうやら、貴志の顔も真奈には好みのど真ん中のようで、真っ直ぐ見ることが出来ないようなのだ。
しかし、真奈には是非とも見慣れて欲しい。

それに、その上目遣いは逆効果かも。
真奈は自分が飛び抜けて可愛らしい容姿だと分かっているんだろうか。

自覚がないとしたら、怖すぎる。
でも、自覚はない気がする。
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