お見合いは未経験
「真奈、この話、進めるから。」
「はい。父にも話してあります。」
食事も終わり、デザートも落ち着いた頃、貴志はそう、真奈に切り出した。

改めて見合いの話を進めたいという意思を伝えたつもりだが、真奈も話をすすめることに異議はないようだ。

そうか...それなら...。
「今日、遅くなっても構わないかな?」
貴志は、緩く首を傾げて、
「え?それってどういう…?」
貴志はホテルのカードキーをテーブルに置く。

「えっ!あっ、あの…」
「いやなら、やめる。一緒にいるだけでもいいよ。少しゆっくり話がしたいんだ。」
「はい。」

俯きつつ、とてもか細い声ではあったけれど、ハッキリとした『はい』という返事。

レストランの会計を済ませた貴志は、真奈の手を繋いで、エレベーターに向かった。
カードキーを使って部屋に入る。

貴志は「失礼」と言ってジャケットを脱いだ。
「おいで」と手を繋いで、わざとベッドに座る。

手を取られたまま、真奈は立っていた。
とても、困っている。

貴志がベッドの横をとんとんすると、真奈は迷いながらも、横に座った。
「いい子だね。」
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