お見合いは未経験
貴志は真奈の頬に手を添える。
そっと、指を滑らせた。
真奈は何が起きているのか分かっているのか、いないのか、ぼうっと貴志の顔を見ている。

貴志がにこっと笑いかけると、真奈は頬を染めた。
「真奈…」
「はい。」

指で触れるとやはり、思った通りふんわりとしていて、キメの細かい肌だ。
そして、貴志好みの日本人形のように整った顔。
黒目がちの瞳は吸い込まれそうで、白い肌は触れ心地も良くて、無防備なその表情には彼女の全てを自分のものにしたくなる。

「キスをしてもいいかな?」
疑問形ではあるけれど、貴志にこんなに近くで顔を覗きこまれて、その妖艶な雰囲気にぼうっとなっている真奈が逆らえる訳はなかった。

「え、…あの、私…」
「目を閉じて?」
貴志の柔らかい声に素直に瞳を閉じている真奈は本当にお人形のようだ。

それでいて、一生懸命。
こんなにそそられることは少ない。

ちゅ、ちゅと何度かキスをしてみた。
緊張はしているようだが、嫌がっているようではない。

貴志は頬に添えた手に軽く力を入れる。
少し、真奈の唇が開いたところを見計らって、様子を伺いながら、そっと舌を差し入れてみた。

「…!」
驚いて身体が、びくんとする。

ぱっと目が見開かれ、貴志は
「大丈夫。」
と言って、きゅっと抱きしめた。
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