お見合いは未経験
「正式にお願いする。結婚を前提に僕と付き合って下さい。」
「はい。」

お見合いなのは、分かっていたけれど、お断りしようと思っていた。
でなくても断られる、と思っていた。

それがとても、素敵な素敵な人が現れて、結婚を前提にお付き合いして下さいなんて、言われるなんて、思ってもみなかった。

すごく、幸せ…。
ぴんとはこないけれど。

その時、ふと、あごを持ち上げられ。
榊原の端正な顔がどんどん近づいてきて、ふわっと唇が重なった。

え?キスされたのでしょうか…?

「ん?」
「いえ、あの…初めてだったので…。」

どうしよう。恥ずかしい、けど嬉しい。



後日、閉店後、真奈の席に会社の女性達が群がってくる。

昼間の営業時間帯に、なんと、貴志が顔を出したのだ。
日中、電話を取って顔を上げ、ふと視線を感じた気がしたのでそちらを見たら、榊原がいたので、真奈は驚いた。

打ち合わせと言っていたが、周りの視線を浴びてもびくともしていなかった。
惚れ直してしまう。

素敵だった...貴志さん...

「小笠原さん、さっきの方、お知り合い?」
「はい。」
「素敵な人ねー。」
分かります。
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