お見合いは未経験
「では、それで真奈さんと打ち合わせします。結納もさせて頂きます。」
「うん。そうしてくれ。」
当主の機嫌は悪くなさそうだ。

ひとつ、お願いがございまして。と貴志は切り出す、
「真奈さんに指輪を贈りたいんです。」
「婚約指輪かな?」
「ええ。結納前ではあるのは、充分承知しているんですけど。」
「真奈がいいのであれば、そこまでは問わないよ。」

「本日、真奈さんを連れ出す許可をお願いします。」
「まあ、子供ではないからね。私の許可はいらないだろう。」
「ありがとうございます。」

「当然だろうけど、君はそつがないね。」
「恐れ入ります。」
有益だったよ、と当主に握手を求められた。

「真奈がベタ惚れになる訳だね。」
「え…」
そつがない、はよく言われることなので、何とも思わないが、ベタ惚れ...?
真奈、そんなこと報告してるのか?
さすがに動揺すると、してやったりの顔にぶつかる。

「まあ、見る目はあろうよ。」
「光栄です…。」
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