お見合いは未経験
当主の前を辞すると、パタパタっとスリッパの音がして、真奈が駆けてきた。
「貴志さんっ!」
「真奈。お父様の許可は頂いたよ。」
「それって…」
「うん。結婚のね。出掛けられる?」
「はい。」

真奈は上はブラウスだが、下はサブリナパンツで動きやすそうな服装をしていた。
普段のワンピースもいいと思うが、初めて見たパンツ姿も似合っている。
玄関まで行くと、真奈の母と先程のお手伝いの女性がいた。

「先日は、たいしたご挨拶も出来ず、失礼致しました。」
と真奈の母に頭を下げられた。
「こちらこそ。」

「よろしくお願い致します。」
「お預かり致します。」
貴志も頭を下げる。

「もう!お母様も、貴志さんもおやめ下さい。
では、行ってまいります。」
真奈はお手伝いの女性から、荷物を受け取った。
さらにそれを貴志が持つよ、と受け取る。

「ありがとうございます…。」
真奈のはにかんだ笑顔を見ると、貴志も安心できた。
「ホント、スマートねぇ…」
「お母様っ!」
母娘のやり取りは微笑ましい。

貴志はくすっと笑ってしまった。
「じゃあ、行こうか。」
「はいっ。」
本当に真奈は嬉しそうだ。
車に乗ってもにこにこしている。
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