お見合いは未経験
「ご機嫌だね?」
「だって、一緒にお出かけ出来るなんて。すごく楽しみなんです。」

楽しみな気持ちを素直に出してくれているのが、貴志にも嬉しい。

車、という空間は貴志は嫌いではない。
お互い目線が合わないくせに、距離は近い。
意外と言いたいことが、言える気がするからだ。

「僕もだよ。お父様が結婚式は秋くらいに、と言っていたけれど。大丈夫かな?」
「もちろん、私は大丈夫ですけど、貴志さんは…」
「まあ、期末さえ終わればって感じだな。10月中旬くらいがいいかな、と思うけどね。今度、式場も見に行かないとね。」

そう言えば招待客のリストも作らなくてはいけないか…。
「真奈のドレス、今から楽しみだよ。」
「私も、楽しみです…。」

車をデパートの駐車場に入れ、貴志が真奈を連れて行ったのは、デパートの隣の路面店の宝飾店だった。

あの、お見合いの日、電話を入れ、オーダーしてあったのが、先日入荷があった、と連絡が来たのだ。

「えっ?え?あの、ここって。」
大きな宣伝こそ打っていないが、有名な宝飾店である。

「それもさっき、許可を頂いたから。」
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