お見合いは未経験
「でも、この歳で振袖とか、嫌って言ったんですけど。」
「とても素敵です。お似合いですよ?」
「あ、りがとうございます…」
「今、お勤めはされてるんですか?」
「はい。」
「どちらに?」
「えっと、銀行です。」

ん!?

「あのっ、でも、榊原さんのところじゃないです。信託銀行なんです。そこで事務アシスタントをしています。」
確かに、この感じでは窓口や営業は難しいだろう。

信託銀行は普通の銀行とは少し趣きが違う。
そこでのアシスタントとは、営業課員のスケジューリングや、資料を用意したり、書類の作成を担当したりしている、ということだ。

「僕の勤め先のことはご存知なんですね。」
「はい。父から聞いて。」

なんと言うか。
こちらには、情報がほぼ来ていないのに、先方には榊原の情報をもう握られていたらしい。

「本当にごめんなさい。」
「真奈さん。」
「はい…」
「謝る必要はないんですよ。僕も充分理解して、来ていますから。それより、せっかくですから、お食事頂きませんか?」
「はい。」

真奈自身は、大人しくて、人見知り。
そしてこの美貌。
食事のマナーもしっかりしている。
というか、品のある食事の仕方も好みだ。

どれだけ綺麗でも、いざ、食事を始めると品がなかったりしたら、興醒めだ。  
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