ダイヤの王様
そして、時は過ぎて――


「今夜の電車で帰って来るんだけど、誰も迎えに行けなくってねえ。由香里ちゃん、頼めるかしら」

ご近所さんである彼の母親が突然訪ねて来たのは今日の午前中。

短大が冬休みになり、家でゴロゴロするばかりの私に断る理由なんてない。内心の動揺を必死に隠し、私は微笑んで快諾した。

彼と私の家族には、あの日のことは何も話していない。二人は相変わらず仲良しで、気の合う幼馴染みだと、皆信じている。


20:07

デジタル表示から改札に目を移す。

彼と同じ電車から降りたらしき乗客が、次々に出てくる。

どきどきして倒れそうになりながらも、私は勇気をもって歩み出た。私が迎えに来るのを、彼は知っているはず。

でも……

あの日の、頑なな横顔を思い出す。

無視されたらどうしよう。

知らんぷりされたら。
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