ダイヤの王様
だけど、私は一歩一歩踏みしめながら改札の前に進んで行く。あの日、彼の勇気をないがしろにした自分への罰だった。どんな態度を取られてもいい。傷付いてもいい。
彼を、見つけたかった。
ダウンジャケットにデニム。肩には鞄ひとつ。見覚えのある、軽快な姿が現れた。
背が高くなった? ううん、変わっていない。ちょっぴり逞しくなったのだ。
彼は19になっている。私も、そうであるように。
改札を出てくると、私を見た。
すぐそこに待っているのを知っていたように、迷いもせずにまっすぐに近付いて来る。膝が震えて、動くことができない私の目の前に彼は立った。
「お、お帰りなさい」
上擦る声に、怒った顔は反応せず、ぷいと横を向いた。
「悟……」
「……」
ダイヤのキング。
もう、許してくれないだろう。
だけど、あの日の答えを伝えなくては。勇気を持って、怖がらないで。