ダイヤの王様
そうっと、ポケットから手を出す私。

彼の頬がぴくりと動き、ぎこちなくだけど、こちらを見てくれた。

冷たい私の手の平に、しわになったダイヤのキング。あの時のまま、ずっと握りしめていた私の想いを差し出す。

「由香里」

呟かれた名前に涙が出そう。彼の声は、あの時よりも低いトーンに変わっている。

「私、怖くて言えなかった。嘘をついたの、本当はね……」

言いかけるのを遮るように、彼は無言でカードを取り上げると、指で四方に引っ張り、しわを伸ばした。でもそれ以上は伸びないのを、私は知っている。

アイロンをかけても、何をしても元には戻らなかった。

もう、元には戻らない――

「どうしてくれるんだ」

怒ったような言い方。だけど、彼らしく懐かしい口ぶりが、うつむく私を上に向かせた。

「ババヌキの時、ジョーカーでないのがばれちまう」

「あ……」

久しぶりの笑顔。

変わっていない、大好きな微笑みが見下ろしている。
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