極上御曹司と授かり溺愛婚~パパの過保護が止まりません~
 なにも今日じゃなくても……と私は不満全開なのだけど、朔也さんにその旨を伝えると『俺にとってもお姉さんとお兄さんになる人たちだから、会っておいた方がいい』と言ってくれる。

「うん……」

 私としては姉には会いたい。けれど、朔也さんとふたりだけの時間は大切だ。

「美月、お姉さんたちはすぐマニラに戻ってしまうんだろう? お義父さんに行くと伝えて」

「朔也さん、急でごめんなさい。じゃあ電話するね」

「俺に謝る必要はない。いずれ家族になるのだから」

 私はコクッとうなずき、父の番号に発信した。朔也さんの言葉を伝えると、父は機嫌よく『よろしく言ってくれ。楽しみに待っている』と言った。

 父のウキウキとした姿が目に浮かぶ。朔也さんは父のお気に入りだから。

 通話を切って、バッグにしまう私の頭に朔也さんの手のひらが置かれ、優しくポンポンと弾む。

 こういうときの私は、彼から見たら子どもなのだろうか。

「食べすぎるかもしれないから、明日の仮縫いが心配になった?」

 朔也さんは端整な顔をからかうように緩ませる。

「もうっ、朔也さん!」

 料理研究家でもある母は、今晩のために張りきっていることだろう。

「俺もお義母さんの手料理を食べたいと思っていたんだ。うれしいよ。何時だって?」

「あ、七時と」

「まだ時間はたっぷりあるな。ここを出たら手土産を買いにいこう」

 私は「うん」と朔也さんに笑顔を向けた。

「メインのトンネルに早く行かなきゃ」

 彼と手をつないで、矢印の方向へ歩を進めていった。
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