極上御曹司と授かり溺愛婚~パパの過保護が止まりません~
「疲れただろう?」

 私を送る帰りの車の中で、朔也さんがねぎらうように言う。

「それほどじゃないです。どちらかといえば、仮縫いで緊張しながら立っていたのでそちらの方が」

 私は薄暗い車内で、彫刻のように見える整った朔也さんの横顔を見つめる。

 今週はふたりでまったりできなかったな……。

「明日は講義がないだろう? なにをする予定?」

 月曜日は講義をひとつも入れておらず私は休日。けれど朔也さんは明日から金曜日までの五日間、夜遅くまで働かなくてはならない。毎日激務だけれど、月曜は休みの私に合わせて朔也さんが早めに仕事を終えてくれる日もまれにある。

「母の料理教室へ行ってきます。朔也さんは明日の夜は遅い……? お弁当を持っていけたらなと思ったんだけど」

 期待を込めて聞いてみると、朔也さんの手が私の後頭部に回る。

「早く帰るよ。先に部屋にいてくれる?」

 髪を優しくなでられる。彼は私の髪の触れた感じが好きだと、よくこうされる。

「本当に? いいの?」

「もちろん。今日も美月を送らなくてはならないのがつらい。早く籍を入れたい気持ちだ」

 朔也さんの手が離れステアリングに戻ると寂しい気持ちに襲われる。いつでも彼の手に触れられていたい。

「美月、もうすぐ夫婦になるんだから遠慮する必要はない。素直な気持ちをぶつけてくれれば俺もうれしい」

「朔也さん……」

 信号が赤になり静かに止まる。いつも不安を感じさせない巧みな運転だ。

 朔也さんは私の方へ顔を向ける。

「ふたりだけで会いたいとずっと思っていた。十八時になったらすぐに家に向かうよ」

 突然の告白に私の顔が急激に熱を帯びてくる。

「私も会いたかったの。ギュッて抱きしめてほしくて」

 心の内を正直に口にすると、朔也さんはふっと口もとを緩ませ「俺もだ」と言ってくれた。そこで信号が青に変わり、朔也さんはアクセルを軽く踏んで車を走らせた。
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