極上御曹司と授かり溺愛婚~パパの過保護が止まりません~
 翌日の午後。私は母に料理を教わりながら、キッチンの中をバタバタ動き回っている。結婚を意識する前まではまったく料理をしなかったのでまだ手際が悪く、そばで教えてくれる母はあきれている。

「あと半年でできるようになるのかしら……朔也さんに迷惑がかからないように、これからビシビシ仕込むからね?」

「お料理をしながら洗い物だなんて高等技術は無理よ。作ってからゆっくり洗いたいんだけど」

 私は鍋の中で鶏肉がいい色に揚げられていくのを見ながら、並びのシンクでボウルを洗う。

「同時進行できるのが主婦よ。水しぶきは上げちゃダメ。鍋に入ったら油が撥ねて飛ぶわよ。火傷したら大変だわ」

「はーい」

 世の主婦はすごいと思う。でも、朔也さんのために料理ができるようにならないと。おなか空いたって言われて、冷蔵庫にあるものでササッと作ってあげられるように。

「美月ったら、なにニヤニヤしているの? 朔也さんのことでも考えていたのかしら?」

 母の茶化すような声が耳に入ってきて、私はハッとなる。

「そ、そんなんじゃないからっ」

 ボウルを水切りかごに置いて、エプロンで手を拭きながら唐揚げの状態を確認する。

 菜箸を手にしていい色になってきた鶏肉を転がそうとしたとき、パチッと油が撥ねた。

「きゃっ!」
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