極上御曹司と授かり溺愛婚~パパの過保護が止まりません~
 飛んできた油が手の甲にあたって、ピリッと痛みを覚える。

「大丈夫? 水道水で冷やしなさい」

「う、うん」

 再びシンクに移動して蛇口の取っ手を上げて水を出すと、手の甲を差し入れた。

 少し赤くなったけど大丈夫そうだ。気をつけないと。


 なんとか作り終え、料理を二段の重箱に詰めたのが十六時。まだ時間に余裕があってホッと安堵のため息が漏れる。

 そんな私を見て、母は楽しそうに口もとを緩ませた。

「好きな人に会いにいくってウキウキしちゃうわね」

「またぁ。茶化すんだから」

「だってわが娘ながら、かわいいんだもの。早く出かける支度をしなさいな。油まみれだからシャワーを浴びて。意外と髪の毛に匂いがつくのよ」

「うん。お母さん、お料理教えてくれてありがとう」

 母に手伝ってもらいながら、満足のいくお弁当になったと思う。

「あ、そうだわ。朔也さんは明日も仕事なんだから、送ってもらわずにタクシーで帰ってきなさいね」

「そうする」

 私はキッチンを離れて、二階の自室に向かった。
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