極上御曹司と授かり溺愛婚～パパの過保護が止まりません～

　姉のあの怒り方からして、あらぬ場面を想像してしまい、頭を左右に振った。

「ひどいね……お姉ちゃん、かわいそう……」

　姉が気の毒になってしんみりしたところで、また興奮したような声が聞こえてきた。

「もうあんなつまらないところには戻らないわ！　美月っ！」

　突として私が呼ばれ、困惑しながらキッチンから出る。

「美月、あなたならわかってくれるわよね？　愛している人がほかの女とベッドで抱き合っていたら、百年の恋も冷めるわよね!?　許せないわよね？」

「お姉ちゃん……」

「郁美、美月を巻き込むのはやめなさい。この子はそういったことに疎いんだ」

　父は顔をしかめて窘めるが、姉は聞く耳を持たない。

「お父さん、疎いって？　婚約者がいるのにそんなはずないわよ」

　姉の口からこれ以上変な言葉が出てこないように、私は口を開いた。

「お姉ちゃん、わかるわ。ショックよね。私も浮気は許せないけど、ちゃんと話し合った方がいいと思うの」

「まったく、美月は昔からいい子ちゃんなんだから。話し合う余地なんてないわ。弁護士に手続きしてもらう。慰謝料も請求してやるわ！」

　姉は怒りに任せて乱暴にソファから立つと、隅に置いてあったスーツケースを持って二階へ行ってしまった。

　残された両親と私は重い空気のまま当惑していた。