極上御曹司と授かり溺愛婚~パパの過保護が止まりません~
 結婚式を三月下旬の土曜日と決めて、現在は式場の打ち合わせなどで時間を割かれることが多くなった。彼は頻繁に海外や国内出張があるので、会える土日は大切な時間だった。

「朔也さん!」

 近づく私に気づいている彼は、美麗な笑みを浮かべて待っている。

「美月、走ったら危ないぞ」

「大丈――きゃっ!」

 朔也さんの目の前で足を止めた途端、小石を踏んで転びそうになり彼の腕に引き寄せられた。

「これで大丈夫だって?」

 私の背に手を回して見下ろす朔也さんは、今にも噴き出しそうな顔でたしなめる。

「今のは、あの小石に気づかなかっただけです」

 呼吸を整えながら、足もとに転がる小石をひと睨みして、彼ににっこり笑う。

「息が荒いな。またキャンパスから走ってきたのか?」

「ま、まあ……」

 私は小さく微笑みを浮かべる。

「いつも言ってるだろう? 俺を待たせているからと言って気を使う必要はないと。次回からは待ち合わせ時間を十分遅らせよう」

「えっ! そんな必要ないわ。早く会いたかったの。一分でも一秒でも」

 朔也さんはあきらめたようにため息をそっと漏らし、私のおでこに軽くキスを落とした。それから助手席のドアを開けて乗り込ませてくれる。

 もうっ、心の中をさらけ出したのに……。
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