私達には、関わらないで!!

何度か指が往復していると······

先程の男性が
「私は、早乙女と申します。
今、専務の秘書をしております。
どうか、専務を救ってください。
こんな生活を丸二年以上
しております。

一年目もあちこちの
石川の会社を回されて
二年目から会社の専務を勤めております。
この二年、寮に帰ることは殆どなく
仕事のみです。

睡眠は、10分、20分····ほどで·····
専務室のソファーに横になるだけ。

食事も三食取る事はなく
食べても一日一食といいますか
パン一個······おにぎり··のみか·····です。

いくら休むように
食べるように言っても
聞いてくれません。

何かに追い立てられるように働いて
いらっしゃいます。」
と、早乙女さんは、苦しい顔を
しながら話してくれた。

だが·····

 私にどんな力があると·····

    あるわけ····ない·····

私は、首を横に振り
病室を出て行こうとした。

「芽依さん」と、陽真君の
声と共に·····
「······メ··イ·····」
小さな、小さな、声が聞こえて·····

振り向くと····
こちらを見ている悠真がいた
目も虚ろだが····私を見ている

ベッドに駆け寄ると
起き上がろとするが
力がないようで
倒れそうになるのを
私と陽真君で支えると
「はるま、ひけっ。めいにさわるな。」
と、言うから
陽真君は、笑いだし
私は、悠真をベッドへと横にさせてから
悠真のおでこにコツンと
げんこつをして
「陽真君になんて事言うの。
お兄さんを悠真を心配して
何度も何度も、
私の所に来てくれたんだよ。」
と、言うと
悠真は、はっと陽真君を見た
陽真君は、素知らぬ顔をしていたが···
悠真は、
「陽真、ごめん。
  そして、ありがとう。」
と、言い
「芽依····会いたかった。
どれだけ、この手が恋しかったか
どれだけ、芽依を抱き締めたかったか
どれだけ·····
涙で、言えなくなる悠真を
ベッドに寝てる悠真を抱き締めた。

悠真も腕を出して
抱き締めてくれた
か細い腕で······
「悠真、ちゃんと食べて
そして、ちゃんと寝て
早乙女さんも陽真君も
心配してるよ。」
と、言うと
悠真は、何度も頷いて
「芽依、愛してる。
俺から離れていかないで。
俺は、芽依以外にほしいものはない。」
と、言われて
戸惑うが·····
「好きだよ。悠真。」
と、心の奥底にしまった言葉を伝えた。

「次、いつ会える?」
と、悠真に言われて
陽真君を見る
「また、近い内に連れて来ます。
約束するから、兄さん。
体を大切にして。」
と、陽真君
「わかった。
芽依、陽真、早乙女
体を大切にすると約束する。
次に会うときに
俺の話を聞いてほしい。
芽依も一緒に。」
と、言うから
私達、三人は悠真を見て頷いた。

再び、病室を出るときに
私は、悠真を抱き締めて
唇にキスをした。

カサカサの唇は、
悠真の体調がおもわしくない事を
意味する。
一日も早く元に戻って欲しい。

陽真君は、
「送ってくれる。」と言ったが、
「帰りが心配になるから。」
と、言ってタクシーで帰った。

早乙女さんがチケットをくれたから。

陽真君と早乙女さんと
連絡先を交換して。

私は夜明けにマンションに着いた。

陽菜乃は、伯父さんとゆかりちゃんの
所だろう。

お風呂に入り
少しだけ仮眠を取り
陽菜乃の幼稚園の準備をして
伯父さんの家へと向かった。
< 20 / 65 >

この作品をシェア

pagetop