【改訂版】CEOは溺愛妻を杜に隠してる
当日。見合いなんて聞いてません!
本日はお日柄もよろしく、晴天なり。
目指す場所は東京の港区様にある。
高速道路からも乗り降りしやすいし、電車は私鉄が二本乗り入れてる、無茶苦茶交通な便がよいところ。
見渡せばハイブランドショップになぜか画廊が多い。それから、ステキ女子のフリしたくなるおっしゃれなカフェやレストランがわんさか。
高級車に、通り過ぎる人がたまに有名人だったりする。
……うん、私みたいな普通人はいささか気後れ、のちセレブのお姉さんになれたと勘違いしそう。
エグゼクティブな男女なら『俺の街』って思ってるんだろうな。
そんな街に出来た複合施設、TOKAIヒルズ。私が見学したかったガーデンはヒルズの屋上に設けられている。
セレブ達が貸切にしてはここでデートするために来日するという、素晴らしい日本式庭園だ。
庭園内をうっとり鑑賞していた私こと三ツ森ひかるに、いきなり走り寄ってきた男性と相対して数十秒。
百八十センチ越え、ばっちりなスタイルをオーダースーツに包んでいる。
凛々しいうえにイケメン。
男の人なのに綺麗としか言えない。そして全身から漂うリッチさ、有能さ!
三十になるかならずにしか見えないが、庭の管理人よりは庭のオーナーという貫禄だ。
……そんな本物からすれば私の令嬢付け焼き刃感、半端ないんだろうな。
従妹のアイディアを借りて『どこぞの令嬢、お見合いなり』をコスプレしたんだけど、バレバレだったか。ハンサムゴージャスセレブっぽい男性はゆっくりと口をひらいた。
私は首をすくめる。
「光、俺は貴女と結婚する」
「え?」
今、なんて言った?
私はまじまじと見てしまう。
……やはりハンサムすぎる。
彫りの深い整った顔立ちで、超絶美形と言っていい人だ。男性としての甘さや、華や艶はあるけれど、あくまで凛々しい。
竹。
いや、黒松が具現化したような人だ。
人間数十代分の叡智を身裡にやどしながら、キラキラした生命力に満ちた人。
に、プロポーズされたら喜ばなければいけないんだろうけれど、残念ながら目の前にいる人に見覚えがない。
……新手の詐欺だろうか。
もしかしてモデルか俳優さん?
撮影中だったのかな。それなら納得。
「『ひかる』違い、ですよね?」
聞き返しながら周りを見たけど、撮影スタッフや相手役は見当たらない。
「違わない。貴女は、ここTOKAIショッピングモールの坪庭、『野点』を作った庭師だろう?」
男性は自信たっぷりに言い切った。
なんで知ってるの?
嘘は許さない、という目で見つめられて観念した。
「そうです」
「ならば間違いない」
なぜかギンギンな視線で私を見つめてくる。
……なんというか、
『狼に兎認定されて、食べられちゃう私〜さわやかな庭園の薫りを添えて〜』みたいな瞳。
猛獣に食べられる寸前の捕食動物感がはんぱない。
が。
「話が見えません」
怯えながらも私が言えば、その人は秀麗な眉をひそめた。
「……聞いていないのか?」
「なにも」
まったくわからない。ミステリーでも、もう少しヒントがあるよ?
「では。ここは俺、『隠岐護孝』と多賀見氏縁の女性との見合いの場なのに、なぜ貴女が振袖を着てこの場にいる?」
「っ、それは……!」
私が要予約制の庭園を見たいと言ったから、従妹が知恵を貸してくれたのだ。
「心あたりがあるようだな。では、君は俺の見合相手だ。俺は君と結婚する。ひかる、破談もさせない」
男性……隠岐さんは私の腰を抱くとホテルへ向かい始めた。
「ちょっと待ってください! 私、まだ庭園を見学中でっ」
「後だ」
彼は携帯を出すとどこかへ電話した。
「俺だ。結婚することにした。ああ、多賀見氏を呼び出してくれ」
多忙な伯父様を呼びつけるなんて、この人何者?
しかも、いきなり結婚ってどういうこと。
なんでこんなことになった?
記憶を遡ってみよう。
……発端はたしか、この日から三週間前。
目指す場所は東京の港区様にある。
高速道路からも乗り降りしやすいし、電車は私鉄が二本乗り入れてる、無茶苦茶交通な便がよいところ。
見渡せばハイブランドショップになぜか画廊が多い。それから、ステキ女子のフリしたくなるおっしゃれなカフェやレストランがわんさか。
高級車に、通り過ぎる人がたまに有名人だったりする。
……うん、私みたいな普通人はいささか気後れ、のちセレブのお姉さんになれたと勘違いしそう。
エグゼクティブな男女なら『俺の街』って思ってるんだろうな。
そんな街に出来た複合施設、TOKAIヒルズ。私が見学したかったガーデンはヒルズの屋上に設けられている。
セレブ達が貸切にしてはここでデートするために来日するという、素晴らしい日本式庭園だ。
庭園内をうっとり鑑賞していた私こと三ツ森ひかるに、いきなり走り寄ってきた男性と相対して数十秒。
百八十センチ越え、ばっちりなスタイルをオーダースーツに包んでいる。
凛々しいうえにイケメン。
男の人なのに綺麗としか言えない。そして全身から漂うリッチさ、有能さ!
三十になるかならずにしか見えないが、庭の管理人よりは庭のオーナーという貫禄だ。
……そんな本物からすれば私の令嬢付け焼き刃感、半端ないんだろうな。
従妹のアイディアを借りて『どこぞの令嬢、お見合いなり』をコスプレしたんだけど、バレバレだったか。ハンサムゴージャスセレブっぽい男性はゆっくりと口をひらいた。
私は首をすくめる。
「光、俺は貴女と結婚する」
「え?」
今、なんて言った?
私はまじまじと見てしまう。
……やはりハンサムすぎる。
彫りの深い整った顔立ちで、超絶美形と言っていい人だ。男性としての甘さや、華や艶はあるけれど、あくまで凛々しい。
竹。
いや、黒松が具現化したような人だ。
人間数十代分の叡智を身裡にやどしながら、キラキラした生命力に満ちた人。
に、プロポーズされたら喜ばなければいけないんだろうけれど、残念ながら目の前にいる人に見覚えがない。
……新手の詐欺だろうか。
もしかしてモデルか俳優さん?
撮影中だったのかな。それなら納得。
「『ひかる』違い、ですよね?」
聞き返しながら周りを見たけど、撮影スタッフや相手役は見当たらない。
「違わない。貴女は、ここTOKAIショッピングモールの坪庭、『野点』を作った庭師だろう?」
男性は自信たっぷりに言い切った。
なんで知ってるの?
嘘は許さない、という目で見つめられて観念した。
「そうです」
「ならば間違いない」
なぜかギンギンな視線で私を見つめてくる。
……なんというか、
『狼に兎認定されて、食べられちゃう私〜さわやかな庭園の薫りを添えて〜』みたいな瞳。
猛獣に食べられる寸前の捕食動物感がはんぱない。
が。
「話が見えません」
怯えながらも私が言えば、その人は秀麗な眉をひそめた。
「……聞いていないのか?」
「なにも」
まったくわからない。ミステリーでも、もう少しヒントがあるよ?
「では。ここは俺、『隠岐護孝』と多賀見氏縁の女性との見合いの場なのに、なぜ貴女が振袖を着てこの場にいる?」
「っ、それは……!」
私が要予約制の庭園を見たいと言ったから、従妹が知恵を貸してくれたのだ。
「心あたりがあるようだな。では、君は俺の見合相手だ。俺は君と結婚する。ひかる、破談もさせない」
男性……隠岐さんは私の腰を抱くとホテルへ向かい始めた。
「ちょっと待ってください! 私、まだ庭園を見学中でっ」
「後だ」
彼は携帯を出すとどこかへ電話した。
「俺だ。結婚することにした。ああ、多賀見氏を呼び出してくれ」
多忙な伯父様を呼びつけるなんて、この人何者?
しかも、いきなり結婚ってどういうこと。
なんでこんなことになった?
記憶を遡ってみよう。
……発端はたしか、この日から三週間前。
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