【改訂版】CEOは溺愛妻を杜に隠してる
 護孝さんは筋肉に覆われた均整のとれた体を持ち、オーダーのスーツを着なれている。
 彼のスーツ姿に毎度惚れ直している私だが、着物姿には武芸者か伝統芸能の方のような艶があって魂を抜き取られかけた。

 がっ!
 モーニングコートを身につけた彼は、姿勢の美しさもあいまって、見惚れるほどに凛々しい。
 
 やーん、携帯の待受画面とブロマイドにしたい。
 勿論、ブロマイドは私が買い占める!
 ……えっと。

 タイには、私のカチューシャと同じく真珠とペリドット、グリーンガーネットのタイピンをつけている。

「王子様みたい……」

「妖精の隣に立つには、これくらいでないとね」

 うっかり呟けば微笑みかけられ、手にキスを贈られた。
 うひゃあ。

 彼の気障すれすれの優雅な振る舞いに、私は慣れる日が来るのかな。
 なんとなく、一生来ない気がする。

 一八一cmの護孝さんと一五六cmの私とでは、一二cmのヒールを履いても、まだ身長差がある。

「王子様お姫様設定もいいけど、妖精と彼女を守る騎士設定もいいわね……」

 護孝さんのお母様がうっとりと呟かれたので、照れた。

「俺にとっては大事な娘をかっさらう魔王だ」

 目と鼻を腫らした父がボソリと呟く。
 父よ。
 貴方のほうが閻魔大王、いや、熊。

「この魔王は全ての権力や財力を使って、妖精を守っていきます」

 護孝さんがきりりとした表情で宣言してくれたあと、父に近づいて周囲には聞こえないように何事かを告げていた。
 むっつりとしていた父はやがて。

「……なら、仕方ないか」

 呟いたところを、往生際が悪いと女性陣に笑われた。
 
< 103 / 125 >

この作品をシェア

pagetop