【改訂版】CEOは溺愛妻を杜に隠してる
 次の朝、六時に起こされた。
 勿論、愛されはしたが夜中になる前に穏やかな雰囲気になれた。

 夫に抱きしめられながら眠りについたので、スッキリと目覚められる。
 私は急速に、護孝さんとの暮らしに慣れつつある。
 もう、彼の香りや腕がないと、安眠出来ないかも。

「ひかる、今日は早めに出かけるから」
「どこへ?」

「食べてからのお楽しみ。しっかり食べといて」
「言われなくても!」 

 ……シンガポールに到着して以降、夫婦間で敬語は使わないようにと護孝さんから言われているので、一生懸命対等な言葉を使うようにしている。
 だって。

『敬語使った回数だけ、ひかるを抱こうかな』
『ええっ!』

『……こうまで言っても敬語を使うなら、俺に抱かれたいんだという意識表示だよね?』

 とんでもないことを言われてしまったから! 

「だよな」

 二人は笑いながらビュッフェを提供しているティールームに行った。
 ビュッフェには洋食のほか、中華や和食まで用意されている。

 三日目の今日も楽しく食べた。
 部屋に戻ると、今日はかなり歩くと言われたので、私はクローゼットの前で思案する。

 プライベートジェットに運びこまれた、大きなトランクには。
 しっかりと歩ける靴が二足。ドレスアップしたとき用の靴が二足。ホテル内で気軽に歩き回る時のサンダルが用意してある。

 ……ほとんど着る暇のない、セクシーでエレガントなナイティ。

 着心地がよく、軽くてシルエットが美しいサンドレスが数着。寒さ、日よけになるカーディガンやストール。 

 吸湿速乾性に優れた外出着や格調高いドレスは一日一セット分以上、用意されていた。

 勿論、それぞれに合わせるためのアクセサリーにランジェリー。
 数ヶ月は着回し出来そうな量が用意されていて、正直のけぞってしまった。

「暑い国は特に、心地よさが旅のグレードを左右するよ。室内は冷房が効いてるからね、汗が冷えたら大変だから、こまめに着替えたほうがいい」

 とは夫の言であるが、言いくるめられた気がしてならない。

 何枚かは袖をとおさずにとっておこうとしたら、なぜか。 

『わかった。ひかるの気にいるものが見つかるまでメゾンをはしごするよ』

 とか。

『ひかるは裸でいたいってことか。じゃあ一日中ベッドの中から出さないけど?』

 とか脅されたので、全部頑張って着る。

 ……結婚式の日から自分で脱いだ覚えはないし、毎朝ホテルのクローゼットを開けるたびに服もアクセサリーも靴も下着も増えている気がしてならないんですが。
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