【改訂版】CEOは溺愛妻を杜に隠してる
「お待ちかね、今日はシンガポール植物園だ」

 バーチャル獣の耳がぴんと立って尻尾を千切れるほどに振っているような気分!

 護孝さんが私を見て、たまらず吹き出した。
 なによう。

「ほんとひかるって宝石や服より緑の女だよな!」

 口を尖らせてしまったら、抱き込まれた。

 ふんだ、こんなことじゃ誤魔化されないんだからっ!と思いつつ、彼の腕の中にしまいこまれるのが大好きなのだ。

 安心する。
 世界で一番好きな場所。
 私、ハグやキスが出来るのが結婚制度の一番の利点だと思う。

「褒めてるんだよ」
「褒められてる気がしないんだけど」
「ひかるは俺を家や容姿で見ていない」

 ぽつりと聞こえてきた言葉に同情してしまう。
 容姿端麗というだけでも女性をひきつけるには十分なのに、優秀で家柄も良ければ不本意なかかわりは沢山あったのだろう。

 私が夫の体に腕を回すと、頭をこすりつけてきた。
 可愛くて愛おしくて、仕方ない。
 貴方の絶対的な味方だよ、てずっと伝えていきたい。

「愛する女性と過ごすなんて考えられなくて、仕事だけで生きていくんだと。まさか、ひかると出会えるなんて思わなかった」 

 呟きが愛おしい。

「護孝さん」
「好きだよ」

 私達は固く抱き合った。

「……さて! 大事な奥さんをいつでも、いつまでも幸せにしないとね」 

 護孝さんに無理矢理体を引き離された。
 寂しいって思ってしまうあたり、すっかり躾けられてるなぁ。

 ……彼の頬と瞳が赤くなっていることには気づかないふりをした。
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