【改訂版】CEOは溺愛妻を杜に隠してる
「八:〇〇に植物園のゲートに到着する予定だ」

 うんうん。
 私があまりにキラキラした目をしていたか。
 言いたくなさそうだったが、渋々みたいな感じで口にした。

「……本当は五時から二四時までの営業時間なんだが」
 
「え!」

 行きたい、すぐ行きた行きたい!
 私がダッシュしそうなのがわかったのだろう、慌てて遮られた。

「だめだよ。植物園は約四〇万㎡、ドーム一六個分にもなるらしい」

 なんだ、それくらい楽勝。
 護孝さんが、ちろんと私を見た。
 
「高温多湿のなか太陽の下に一日いたら、おそらく体を壊す。ランチをしたら帰るから」

 えー、大丈夫だけどなぁ。
 あ! 
 いいこと思いついた!

「じゃあ」
「『じゃあ別行動で』はなし」

 え!
 予測されて目を白黒していたら、覗きこまれた。
 夫の顔が不機嫌になっている。

「ひかる、新婚旅行中だってことわかってるか? 俺としては一週間、ひかるとベッドの中でいいのに譲歩してるんだからな?」

 声が拗ねてる。
 その通りだ。

「……はい……」

 しゅんとしてしまったら、護孝さんは表情を緩ませてくれ、頬にキスしてくれた。

「その代わりに、今日含めて三日間は植物園に行く予定にしてある。最終日は空港のバタフライガーデンを見せたいから時間は取れないが」

「いいの?」

「いいよ。だが、絶対に単独行動はしないこと。俺から手を離したら、その後の予定はベッドから出ささい」

 私は慌てて彼と手をつなぎにいった。逃がさない、と決意もあらわに護孝さんに手を強く握りこまれた。

「ああ。午後は俺との時間だからな?」
「ありがとう、護孝さん大好き!」

 私が満面の笑顔をしてみせたら、護孝さんは何故か固まってしまった。
 どうしたの、と見ていれば。
 はああ……とため息をつかれる。

「……まったくもう。奥さん大好きな男にそんな顔を見せるから、こうなる」

 言葉と同時に抱き寄せられる。

「え?」

 見上げるのと、飢えたような護孝さんの口が私の唇を覆うのは同時だった。

「ん……っ、」

「ひかる、愛してる。植物のことばかりじゃなくて、たまには俺に夢中になってくれ」

 なってるよ、という言葉は彼の舌に翻弄されて、彼に飲みこまれた。
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