【改訂版】CEOは溺愛妻を杜に隠してる
「『光』が他に企画した庭は?」

 質問すると、やがてパソコンにデータが送信されてきた。

「受賞歴もなかなかだ。ショッピングモールの坪庭もいいし、他の庭もいい。申し分ない」

 慎吾の感想どおり。どれも一坪くらいではあるが、染み入ってくるものがあるのに不思議な点がある。

「才能の割には、顔写真がネット落ちていないな……」
「どうしてなんだろう?」

 俺がつぶやけば、慎吾も首をひねる。

 まあ、いい。
 俺はひかる関連の資料を全てフォルダにまとめた。
 あとは本人と面談してからだ。

「会ったらわかるだろう。アポイントを取ってくれ」

 俺の言葉に、相棒からのリアクションがない。
 不思議に思えば、微妙な表情の秘書と目が合った。

「……慎吾? どうした」

 無言で渡された『光』のエントリーシートには、坪庭の名前の由来。
 借景の意図や庭に用いられた植物の種類に、完成予想図。
 協賛の呉服店や和菓子店、茶道具店の名前。

「う」

 読み進むうち、俺は自分の口から呻き声が漏れるのを聞いた。

 最後に、『光』の所属先として『 三ツ森(みつもり) 大樹(たいじゅ)造園事務所』の名前があったのだ。
< 14 / 125 >

この作品をシェア

pagetop