【改訂版】CEOは溺愛妻を杜に隠してる
  三ツ森氏は手掛けた庭の見事さから『将来の重要無形文化財候補』との呼び声が高い。
 だが、あえてプロジェクトの総監督候補にしなかった。

 ……実は俺と慎吾二人共、彼に苦手意識を持っていた。

 子供の頃、慎吾と少女の三人で庭園内で遊び回ってた俺は、樹木の枝を折ってしまった。

 自身も怪我したのだが、駆けつけてきた大人に大目玉を食らった。
 その人物こそ、三ツ森大樹その人だったからである。 

 氏にとって俺は叱り飛ばしてきた悪童の一人に過ぎないはずだが、避けてきた。

「ここまできて、最大の難関か……」
「諦める?」

 慎吾の問いに、俺は。

「諦める訳にはいかない、よなぁ……」

 深いため息をついたとき、慎吾が新たな事実を教えてくれた。

「光氏、多賀見製薬社長宅の専属だから、今は新規オファーを受けていないらしい。……違う人物を探すか?」

「そうだな。……いや」

 同等の庭師を見つけて、多賀見氏にコンバートを提案すれば、三ツ森事務所を介さなくてもいいかもしれない。

「慎吾、三ツ森造園事務所より先に多賀見氏へメールしてくれ」 




 次の週に、俺宛に多賀見氏より直接返事が届いた、のだが。

「……なんなんだ、いったい」

 俺は内容を見て、呆然と呟いた。
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