【改訂版】CEOは溺愛妻を杜に隠してる
護孝side見合い当日
 見合い当日。 
 断るにしろ、女性を待たせるのは失礼だ。
 そう思い、早めにオフィスを出たが、見合い場所のあるTOKAIヒルズに予想より到着してしまった。

「はあぁ……」

 憂鬱だ。

「くそっ、俺がなんで見合いしなければならないんだ」

 GOサインを出したのは自分だというのに。
 隠岐家を背負って立つ身。
 いずれは結婚しなければならないと思いつつ、それは今日の相手とではない。

「どうやって相手の体面を潰さずに断り、かつ光氏は借り受けるか」

 考えがまとまらない。
 相手の女性は乗り気だろうから気が重い。 

 従弟ならいい智恵を貸してくれるかもと考え、TOKAIヒルズにオフィスを構えている彼に会いにいこうと思ったが、あいにく出張中だという。

「うまくいかないもんだ」

  見合いの前に少しでも気持ちを上向きにさせておこうと考えていたのに、よけい憂鬱になった。

 仕方ないからオフィス棟の五四階にあるVIPラウンジで仕事をしていた。

「時間だ」

 腕時計を見ていたら、はああ……とため息が出てしまった。
 ラウンジから出ると、庭園を見下ろすことの出来るエレベーターに乗り込む。

 乗り合わせた客がいなかったのを幸い、再度大きなため息を吐き出す。

 見合いを持ちかけて来るくらいだから、同等の職人との交換では済まないのだろう。

 これといった妙案もないままエレベーターの中から外をみれば、嫌になるほどの晴天だ。
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