【改訂版】CEOは溺愛妻を杜に隠してる
「衝撃?」
「はい」

 うながされて、私はつづけた。


『え。なに、これ……』

 私がデザインした庭が放置され、荒れていた。
 コンペの主催者に訊いても、保守や手入れはオーナーや管理会社が考えることだからと、にべもない。

 しかもだ。
 元彼の名前がデザイナーなものだから、無名な私が行ってもどうしようもない。
『なに自分の庭気取りなんだよ。いるよね、恋人のモノは自分の所有物って勘違いする女』ってあちこちで嘲笑された。

 隠岐さんが暗雲たなびかせて、ものすごく低く言う。

「どこの会社だ? 俺が鉄槌を下してやる」

 オーナー会社なんて、この際関係ないんです。大事なのは生み出したのに、どんどん枯れていってしまう庭のことだけ。

『酷い、せっかくの庭が死んじゃう! ……他人の所有地だけど、こっそりと手入れをしに行っちゃおうかな。真夜中ならバレないかなぁ』

 従妹のまえで怒りながら、考えた。

『ひかるちゃん、落ち着いて。ねえ、エステって週に何回行く?』

 玲奈ちゃんがのんびりとした口調で訊いてきた。

『なぁに、いきなり? エステって高いんだもん、しょっちゅうは行けないよ。せいぜい、自分の誕生日くらいかな……あ!』

 答えて、ハッとなった。

 落葉樹が植わっている庭であれば、一日手入れが伸びれば落ち葉が大変なことになる。
 花木は美しい分、散りかけ枯れかけを残しては見苦しくなってしまう。

 毎日、表情が違う。
 来るたびに若芽が芽吹き、蕾が花開き、枯れては散っていく。
 庭を愛する者としては毎日見回りたい。
 が。

『……私。髪を切りに行くのだって、三か月にいっぺんくらい。歯の定期健診だって半年にいっぺんだ……』

 体のメンテナンスでさえそうなのに、庭の美観保守の為にお金を出せる家がどれだけあるのかな。
 そんなの、無理。

 私は、厳しい現実にようやく気がついた。
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