【改訂版】CEOは溺愛妻を杜に隠してる
「多賀見氏は縁遠いひかるに恋してほしくて、俺をあてがったんだろうな」

 なんですと。
 私にこ、この人を?

 かぐや姫に求婚する平民よりすごいよ!
 平安時代に月に行きたいなんて焦がれちゃうようなもんだよ?

 もし、伯父様がそんなことを考えてたらドン・キホーテが風車に突撃するくらい無謀だよね。
 伯父様は勝てない試合をする方じゃないし、お祖母様は人で遊ぶけど、タチが悪いことは伯母様がメッ!するし。

 お父さんお母さんは庶民すぎて、そんなこと思いつきもしない。
 どう考えても、隠岐さんうがち過ぎ案件。

「……ええと。隠岐さんて、肉体系労働女子にあてがう案件ではないような気がものすごくするのですが」

 はじめてまみえたときの伯父様の顔色の青さから察するに、隠岐家は多賀見家より格上だ。

 百歩譲って両家が互角だとしても、私と彼が釣り合ってない!

 隠岐さんはじいっと私を見つめたあげく、ようやく口を開いた。

「俺がひかるの見合い相手なのが不満?」

 低音のなかに知性と野生と雄をほどよくミックスしないでほしい、うっとりしちゃうじゃないか。

 が、相手は自分だと不十分かと聞いてきてる。
 そんなわけないでしょうが!

 私は慌ててぷるぷると頭を横に振った。

「め、滅相もございませんっ」

 私、月収二〇万の一般人。ファストファッションとドラッグストアコスメが御用達です、私が釣り合わないと申しあげてるんです!
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