【改訂版】CEOは溺愛妻を杜に隠してる
「わ、私と隠岐さんでは格差婚どころかエベレストと関東平野くらいの標高差婚です!」

 一生懸命説得しようとしているのに、にこっと微笑まれた。

「大袈裟だな。多賀見家と隠岐なら、せいぜい関東平野と高尾山くらいだよ」

 ……………………多賀見で関東平野だとすると、うちはゼロメートル地帯。
 ううん、マリアナ海溝までいかなくても大陸棚くらいはあるんじゃないの?

「本家で富士山くらいだが、世界にはエベレスト級がゴロゴロいる。なんならオリュンポス火山クラスの名家もあるから、我が家なんか可愛いもんだ」 

 待って、まって、ウエイトプリーズ!

 火星までいっちゃうの?
 二七〇〇〇メートル級の名家って……王族だろうか。
 隠岐さんって、そんな方々ともお付き合いがあるの?

 だ、だいたい隠岐家が指す『本家』ってば、渡会家のことだよね。
 そこがまだ富士山って!

 一般人はそもそも地球から出ることもかなわないんだぞぅ!

 はるか天上を見上げながら生活したらどうなるだろう。

 バードミサイルの直撃に遭うでしょ。
 つまづいて転んだ先はドブだったりマンホールの蓋が空いてたりするんでしょ。

 やっぱり庶民は上を見ながら歩くなんてしちゃだめ。
 地道に下を向いて歩こう。
 でないと、肩がこるどころではない。
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