【改訂版】CEOは溺愛妻を杜に隠してる
「会長が決断した」

 ……伯父様がお祖母様を役職で呼ぶ時、絶対服従のサインである。

 お祖母様は現在、多賀見製薬会社で会長を務めている。

 家督を譲り職務上の権限も完全に伯父様へ移行しているものの、お祖母様が号令を発したときは皆、お祖母様に従う。伯父様もしかりだ。

『問題ありません』

 つるの一声だったらしい。

『ひかるを気に入れば、自分から縁談を申し込んでくるでしょう』

 え、それはない。
 反論しかけたら。

「実際にあの男は自分から縁組を申し込んできたろう」

 ぐうう。たしかに。

『家格がどうのと言い出すのならば、ひかるの婿としてふさわしくない。この方が納得しても親族が騒ぐのならば同様。親族を従わせられないCEOなんて、こちらから願い下げですよ』

「はぁー…………」

 いつもながら、お祖母様の論理は凛々しい。
 ほんと、女傑という表現が似つかわしい。

「というわけだ。格差についてはひかるが気にしなくていい。だが、隠岐氏の人となりを見極めたうえで断りたいなら、きっちり話を通してやるから」

 伯父様にウインクされてしまった。
 しかし、お祖母様が黒幕だったとは。
 ひそかにお祖母様から断る方向で手を回してもらおうと思ったのに。

「…………はい……」 

 うなずく以外、なにが私に出来よう。
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