【改訂版】CEOは溺愛妻を杜に隠してる
「お金持ち過ぎて、ついていけない……」

「人として、ダメな感じ?」
「ううん、尊敬できるよ」 

 裕福な多賀見家と親戚とはいえ、私は庶民。
 あまりにハイソサエティなデートが続くと、悪いけれど疲れてしまう。

 次のデートは断ろうかな……と思っていると、カジュアルな装いで自ら車を運転して、公園や庭園に連れ出してくれる。

『すみません、お気を使わせてしまって』

 恐縮すると笑いかけてくれる。 

『ひかるもそうだと思うんだけど、俺も大概ワーカーホリックでね。見るもの聞くもの全てがヒントになるよ』

 セレブリティであるにもかかわらず、コンビニに入ったり自販機で飲み物を買っているのを見ると、同じ庶民感覚を持ち合わせているようでほっとする。

 引目を感じさせない気遣いが嬉しい。 

「うわ、出来る男って半端ないー」
「そうなんだよぅ〜!」

 護孝さんの知識は広い。
 ことに景観と観光の関連性について造詣が深く、聞いているだけで勉強になることばかりだ。

「ちょっと疲れたなー、て思ってると頭撫でてくれるし。くしゃみをすれば、ジャケットを着せかけてくれるし。……護孝さんだって激務で疲れてるはずなのに」

「つまりは、ひかるちゃんも隠岐さんのことを気にしてるんだ」
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