【改訂版】CEOは溺愛妻を杜に隠してる
 自転車や車が迫ってきたり、通行人とぶつかりそうになると、分厚い胸に抱き寄せられる。

「そっ、そのたびに男らしく爽やかなコロンの香りや熱く感じる体温にドキドキしてしちゃうんだよ……っ」

「意識してるのね、いい傾向だわ」

「ふっと護孝さんのほうを見ると、必ず目が合うし」

「隠岐さんが、ひかるちゃんのこと見つめてるからでしょ」

「見られていると、いたたまれなくなってきて」

「嫌なの?」
「それが……っ」

 慈しみの中に、切ないような焦げつくような感情が潜んでいる気配に、体の奥でなにかが目覚めそうになる。

「嫌じゃない……。でも、もじもじしちゃうの」

「それって、もう隠岐さんに恋してるじゃない」

「違うの、『吊り橋効果』っていうか!」

 どきどきするのは、自分の経験値が低すぎるせいだから! 

「私が観察するに、ひかるちゃんは隠岐さんのことを憎からず思っているよね?」

 間違いないので、うなずく。

「でも、無理ぃ〜!」

 怒涛の口説かれ攻撃に、私のキャパシティはとっくに限界を超えていた。

「なにが無理?」

「……なんで、護孝さんてあんなにぐいぐい来るのかな」
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