【改訂版】CEOは溺愛妻を杜に隠してる
「ふっふっふ。多賀見家のイタズラ班アイデア部隊とは私のこと。ひかるちゃん、振袖を着て見合いしているかのように振るまえば、庭園を歩いていても怪しまれないんじゃない?」

 私はすっかりその気になった。
 お着物着るの大好き!

「ナイスアイデア! そうだっ、玲奈ちゃんもお振袖着て、着物デートしない? ウチのお母さんや伯母様、お祖母様もお誘いして」

 ふふふ。多賀見家美女、総出陣だ! ……注、母と私のぞく。

 が、従妹殿は真面目な表情になった。

「私は駄目」

 玲奈ちゃんに断られてしまった。

「なんで?」

 彼女はわかっていない私に、子供に対してのように説明してくれた。 

「成人式じゃないんだよ? お祖母様や叔母様が同席されるのはともかく『お見合いの席』に、年頃の着物女子が複数いたら変じゃない」

「そっか……」

 私のほうが一コ上なんだけど、彼女のほうがお姉さんぽい。

 んー、着物デートはまたにするか。
 お祖母様に企画をもちかければ比較的たやすい企画ではある。
 たまにはお父さんや伯父様も仲間にいれてあげようかな。
 あの二人のことだからきっと、お母さんや伯母様のことをウットリ見てしまうに決まっている。

「じゃ、今日からひかるちゃんはエステ三昧ね!」  

「えっ」

 なぜにそうなる?
 びっくりしたら、諭されてしまった。

「だってひかるちゃん、日焼けしてお肌真っ黒だよ?」

 ぎく。

「たしか、最後にお祖母様がお振袖を誂えてくださったの、成人式だよね」

 う、うん。それがなにか?
 怖い。聞いてはいけないことを確実に言われる。

「社会人前と後じゃ、ひかるちゃん劇的に肌の色も顔の形も変わってるでしょ」
 
 ぎくぎくー!
 やっぱり言われちゃうと、生命値がごーりごり削られちゃう奴!
 私が顔をこわばらせたら、なだめてくれた。

「責めてる訳じゃないの。女性が一番変わる時期に作ったんだもの、合わなくなっていくのは当然だよ」

 ほ。一安心だ。

「ひかるちゃん、酷使してる割にはお肌ツヤツヤだし」


 そ、そうかな?

「けどね、美肌は一日にしてならずだから!」

 ごもっとも。

「顔映りは小物でどうにかなっても、晴れ舞台に油断した肌や体で臨むなんて、私が許さないんだから」


 ……ハイ……。
 ん?

「玲奈ちゃん。晴れ舞台とは、なんぞ?」

 当日は私以外は植物だらけだよ?
 本当のお見合いじゃないから、誰かと会うわけじゃないし。

「ひかるちゃん曰く、『最高におめかししている木々に、最高のひかるちゃん見せないと』ってことなんたけどな」

 そっか。
 そうだ、彼らは世界最高峰のガーデナーにデザインされて手入れされているのだ。

 たしかに、玲奈ちゃんの言う通りだ。
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