【改訂版】CEOは溺愛妻を杜に隠してる
「そのあと救急車が来て、王子様を搬送していきました。彼に会えたら、あのときのお詫びをしたかったんですけど。父が『話はついている』と状況について教えてくれなくて」

「そうだったのか……」

 二十年経って真相を知った護孝さんは言葉少なだった。

 嫌われてしまったろうか。

「あの、ごめんなさい」

 改めて謝罪すればいいよ、と頭を撫でられた。

「後遺症とかありませんか」

 傷痕とか、残ってしまわなかったろうか。

「残った」

「え? どこどこ! 腕ですか、背中っ?」

 護孝さんはとんと指で胸を突いた。

「心臓、じゃなくて。心に」

 深い色の瞳に照れることすら出来ず、見惚れるしかなかった。

「俺は父上に叱られたことがトラウマになっててね」
 
 苦笑まじりの護孝さんに、申し訳ありませんでしたと頭をさげる。

 ニッと悪い笑みを浮かべると、護孝さんは私の腰を引き寄せて耳元にささやいた。

「俺の心の傷は、ひかるにしか癒せない。一生、覚悟しておけよ?」

「……はい……」

 赤くなったであろう顔を隠すため、私は縮こまった。
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