【改訂版】CEOは溺愛妻を杜に隠してる
 事務所で父が私達を出迎えてくれた。

 父はなぜか護孝さんの顔を見ると、ハッとした。
 それからみるみるうちに、顔が険しくなった。当社比、いつもより数十倍は怖い。

 同時に、母がいないのを不思議に思った。

「お母さんは?」
「必要ない」
「え?」

 父は護孝さんに向き直るなり吠えた。

「いずれ、貴方が訪れる日を心待ちにしていたが。あのときの約束をかさにきて、まさか娘との結婚を持ち出すとは……っ。卑劣にもほどがある!」

「……お父さん?」

「もう二十年前になるのか。落ちたひかるを庇って怪我をした貴方を、病院に送ったあと隠岐家の御当主にお詫びしました」

 父が『その後』を話してくれた。
< 66 / 125 >

この作品をシェア

pagetop