【改訂版】CEOは溺愛妻を杜に隠してる
 父の懸念はもっともだった。
 正直、覚悟なんてない。
 でもね。

「お父さん。誰と結婚しても、困難も茨もない人生なんてありえないと思わない?」 

 私の言葉に父はぐ、と喉になにかがつっかえたような音をたてた。

 私は父の目をしっかりと見て宣言する。

「護孝さんと幸せになる為に私も戦う」

 私の言葉と表情に覚悟を見てとったのか。
 父は眉をへにょりと下げ、護孝さんは反対に歓喜の表情になった。

「……きっと色々なことがあるだろうし、心が折れたら帰ってくるけど」

 気弱になった私に、父はいつでも俺の胸に帰ってこいと両腕を広げ、護孝さんは慌てた。

「ひかるを不幸にさせるような干渉は、隠岐にも本家にも絶対にさせない。約束する、ひかるが俺から離れるくらいなら、俺が家を捨てる!」

 父は私達二人を代わる代わる見つめ、最後には天井を見上げ。
 やがて携帯を取り出した。

「私だ。ひかると婚約者が来てる。十分、そうだな十五分後に母さんもこっちに来てくれ」

 私と護孝さんはぱっと顔を輝かせた。

「お父さん!」 
「では!」
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