【改訂版】CEOは溺愛妻を杜に隠してる
「一人、自分の技量をわかってない者のために言っておくが」
父が私をにらみつけた。
「私と多賀見の御当主の審美眼を舐めるな!」
身が竦むような大喝だった。
先程のクマの吠え声が可愛く思える。
どこかでなにかがパリーンと割れた音や、バサバサと鳥が飛びたったような音がする。
ごめんね、天変地異の前触れではないの。
しかし、これほどの大音量で父に怒鳴られたのは、元彼を破門するとき以来だったかもしれない。
「いくら、私がお前を目の中にいれて持ち歩きたいほど可愛がり、多賀見の義兄がお前達の一人一人にガードマンをつけたがってるくらい大切にしていても!」
「……お父さん……」
もー。
護孝さんはこれから身内になる人だけど、親バカすぎる。
あまりの溺愛ぶりに、護孝さんが鼻白んでいるのではないかと危ぶんだ。
ちらりと様子を窺ったら。
「わかります」
彼はなんと賛同した。
えええ?
どこに共感する要素があるの?
護孝さんも私にガードマンつけたいと思ってるってこと?
玲奈ちゃんならともかく、私を誘拐しても一円にもならない。
あ。
自分で言って傷ついた。
父と護孝さんを忙しく見る私を見て、父がなぜかため息をついた。
護孝さんがいたく同情しているような表情をする。
それを見て、父が深くうなずき。
……男同士で理解しあってても、私にはわからないんだってば。
私がしらーっとした顔になったのを父は気づいたらしく、うおっほんと咳払いをした。
あ。
仕切り直しする気だ。
父はくわっと目と口を開き。
四度、吠えた。
「あの宝石のような庭をぶち壊しかねない輩に、専属などさせんっ!」
………………へ。
私の実力を認めてくれてるからこその、多賀見に配属されたってこと?
え、え。
私みたいな実力のない職人は、多賀見の庭を見て勉強しろってことではなく?
え?
父の宣言に呆気にとられている私とは反対に、感動の表情を浮かべている護孝さんが立ち上がり父に握手を求めた。
「彼女の作品は、『野点』もほかの庭も、私の中に染み入ってきました。だから『光』氏に依頼したのです」
うそ、他の作品も見てくれたの?
それで私に白羽の矢を。
思わず護孝さんをじっと見た。
「隠岐の御曹司、いや若獅子も大した目利きでいらっしゃる!」
父の顔が輝いた。
……なんか。
親方と将来のクライアントに技量を認めてもらえるのは嬉しいんだけど。
父親と、そう遠くない未来の婚約者が自分のことで意気投合してるの、妙に照れる。
激甘なキャンディを舐めてしまったような私をさておいて、父が我が意を得たりと護孝さんの手を強く握り返す。
「っ、」
護孝さんの秀麗な眉がかすかにひそめられた。
二人の握手から、ギリギリと音がしたのは気のせいではない。
レフェリーストップをかけようとしたら、護孝さんに目で止められた。
それどころか、護孝さんは私を安心させるよう、優しく微笑みかけてくれる。
私はうっとり、多分ハートマークを浮かべながら護孝さんの顔を見つめた。
好きだと自覚してしまえば、彼から目を離せない。
護孝さんの視線も、うおっほん!と父が大袈裟に咳払いしても、私から外れない。
父が私をにらみつけた。
「私と多賀見の御当主の審美眼を舐めるな!」
身が竦むような大喝だった。
先程のクマの吠え声が可愛く思える。
どこかでなにかがパリーンと割れた音や、バサバサと鳥が飛びたったような音がする。
ごめんね、天変地異の前触れではないの。
しかし、これほどの大音量で父に怒鳴られたのは、元彼を破門するとき以来だったかもしれない。
「いくら、私がお前を目の中にいれて持ち歩きたいほど可愛がり、多賀見の義兄がお前達の一人一人にガードマンをつけたがってるくらい大切にしていても!」
「……お父さん……」
もー。
護孝さんはこれから身内になる人だけど、親バカすぎる。
あまりの溺愛ぶりに、護孝さんが鼻白んでいるのではないかと危ぶんだ。
ちらりと様子を窺ったら。
「わかります」
彼はなんと賛同した。
えええ?
どこに共感する要素があるの?
護孝さんも私にガードマンつけたいと思ってるってこと?
玲奈ちゃんならともかく、私を誘拐しても一円にもならない。
あ。
自分で言って傷ついた。
父と護孝さんを忙しく見る私を見て、父がなぜかため息をついた。
護孝さんがいたく同情しているような表情をする。
それを見て、父が深くうなずき。
……男同士で理解しあってても、私にはわからないんだってば。
私がしらーっとした顔になったのを父は気づいたらしく、うおっほんと咳払いをした。
あ。
仕切り直しする気だ。
父はくわっと目と口を開き。
四度、吠えた。
「あの宝石のような庭をぶち壊しかねない輩に、専属などさせんっ!」
………………へ。
私の実力を認めてくれてるからこその、多賀見に配属されたってこと?
え、え。
私みたいな実力のない職人は、多賀見の庭を見て勉強しろってことではなく?
え?
父の宣言に呆気にとられている私とは反対に、感動の表情を浮かべている護孝さんが立ち上がり父に握手を求めた。
「彼女の作品は、『野点』もほかの庭も、私の中に染み入ってきました。だから『光』氏に依頼したのです」
うそ、他の作品も見てくれたの?
それで私に白羽の矢を。
思わず護孝さんをじっと見た。
「隠岐の御曹司、いや若獅子も大した目利きでいらっしゃる!」
父の顔が輝いた。
……なんか。
親方と将来のクライアントに技量を認めてもらえるのは嬉しいんだけど。
父親と、そう遠くない未来の婚約者が自分のことで意気投合してるの、妙に照れる。
激甘なキャンディを舐めてしまったような私をさておいて、父が我が意を得たりと護孝さんの手を強く握り返す。
「っ、」
護孝さんの秀麗な眉がかすかにひそめられた。
二人の握手から、ギリギリと音がしたのは気のせいではない。
レフェリーストップをかけようとしたら、護孝さんに目で止められた。
それどころか、護孝さんは私を安心させるよう、優しく微笑みかけてくれる。
私はうっとり、多分ハートマークを浮かべながら護孝さんの顔を見つめた。
好きだと自覚してしまえば、彼から目を離せない。
護孝さんの視線も、うおっほん!と父が大袈裟に咳払いしても、私から外れない。