【改訂版】CEOは溺愛妻を杜に隠してる
嫁候補、姑予定と初顔合わせ
ここのところ、連日うなされている。
未来のお姑さん、お舅さんに挨拶。
現代でも避けて通れない方、多いんではなかろうか。
私もそう。
しかも、庭にいるとき以外は人見知りになる私にとって、悪夢を見ちゃうくらい恐怖のイベントである。
恋愛ドラマでは、サラリーマン同士の結婚ではあっても嫁姑問題が勃発している。
しかも、私と護孝さんときたら!
『多賀見は関東平野で、隠岐家が高尾山』
その多賀見家よりウチ、一家の総年収低いです。
元お嬢様といえ、母はスーパーの特売大好きだし。
「お母さんが嫁いだとき、三ツ森のお祖母ちゃんは亡くなっていたし」
参考にならない。
……そのかわり、お嬢様育ちで棟梁家のしきたりを教えてくれる人がいなかったので、母も苦労しただろうな。
多賀見の伯母様に伺うのもなぁ……。
お祖母様と円満そうだけど、だからといって『嫁姑問題はいかがですか』とは聞きづらい。
しかも伯母様には私の母という小姑もいる。
パンドラの箱を開けたら地雷が入ってるかもしれない。
聞かぬが花、というものだろう。
つまりは、嫁姑対策を講じられないままビクビクしているうちに、とうとうご挨拶に伺う日が来てしまった。
護孝さんに迎えに来てもらい、初めて隠岐家へ訪れた。
「……」
大きい。
洋館で、立派としか表現できない。でも、豪奢よりは瀟洒かな? 優美というか。
今まで造園に伺ったお宅に勝るとも劣らぬゴージャスさ!
けれど仕事として伺うのと、未来の嫁としてお邪魔するのでは敷居の高さが全然違う!
「ひかる?」
固まっていた私に護孝さんが声をかけてくれたけれど、私は大きな花瓶をはたき落とし、高価そうな絨毯を水浸しにした妄想に青くなっていた。
「調度品を壊しちゃったらどうしよう……」
「大丈夫、形あるものは壊れる」
でも、私が終焉を迎えさせたくないんです!
「一生かかっても弁償できない……」
ボソっと呟いたら嬉しそうな声が聞こえた。
「いいな、それ」
「え?」
「ひかるの身と心を一生くれればいい」
「なんか違いませんか」
「違わないよ。さ、母だ」
いつのまにか、美しい絵画がかかっている廊下を護孝さんにさりげなくエスコートされて歩いていたらしい。
示された方向には、重厚な扉から綺麗な女性が出ていらした。
最敬礼より深くお辞儀をする。
「は、はじめみゃしてっ! みちゅもりひかると申しますっ」
噛んだ。
なんとか姿勢をただしたけれど緊張の面持ちでいる私に、彼のお母様が気さくに話しかけてくださる。
「ようこそ、お待ちしておりました。さ、狭いですけど入ってらして」
あの、このお部屋だけで父の造園事務所くらい大きいですよ?
ソファから立ち上がられた初老のダンディなおじ様が護孝さんのお父様だろうな。
「いらっしゃい。息子から『結婚したい女性をみつけた』と報告されてから、お会いするのを待ちかねていたよ」
ほんとに?
「ひかるさんは多賀見製薬の社長の姪御さんでいらっしゃるんでしょ? 私、御社の基礎化粧品シリーズの大ファンで。化粧水、ずっと使っているのよ」
お義母様がほら、と多賀見から出している化粧水の壜を見せてくださった。
優しい方みたい。
私はほっとした。
「怖がらなくていいのよ」
お義母様がウインクしてくださった。
ぎく。
早々にバレた!
未来のお姑さん、お舅さんに挨拶。
現代でも避けて通れない方、多いんではなかろうか。
私もそう。
しかも、庭にいるとき以外は人見知りになる私にとって、悪夢を見ちゃうくらい恐怖のイベントである。
恋愛ドラマでは、サラリーマン同士の結婚ではあっても嫁姑問題が勃発している。
しかも、私と護孝さんときたら!
『多賀見は関東平野で、隠岐家が高尾山』
その多賀見家よりウチ、一家の総年収低いです。
元お嬢様といえ、母はスーパーの特売大好きだし。
「お母さんが嫁いだとき、三ツ森のお祖母ちゃんは亡くなっていたし」
参考にならない。
……そのかわり、お嬢様育ちで棟梁家のしきたりを教えてくれる人がいなかったので、母も苦労しただろうな。
多賀見の伯母様に伺うのもなぁ……。
お祖母様と円満そうだけど、だからといって『嫁姑問題はいかがですか』とは聞きづらい。
しかも伯母様には私の母という小姑もいる。
パンドラの箱を開けたら地雷が入ってるかもしれない。
聞かぬが花、というものだろう。
つまりは、嫁姑対策を講じられないままビクビクしているうちに、とうとうご挨拶に伺う日が来てしまった。
護孝さんに迎えに来てもらい、初めて隠岐家へ訪れた。
「……」
大きい。
洋館で、立派としか表現できない。でも、豪奢よりは瀟洒かな? 優美というか。
今まで造園に伺ったお宅に勝るとも劣らぬゴージャスさ!
けれど仕事として伺うのと、未来の嫁としてお邪魔するのでは敷居の高さが全然違う!
「ひかる?」
固まっていた私に護孝さんが声をかけてくれたけれど、私は大きな花瓶をはたき落とし、高価そうな絨毯を水浸しにした妄想に青くなっていた。
「調度品を壊しちゃったらどうしよう……」
「大丈夫、形あるものは壊れる」
でも、私が終焉を迎えさせたくないんです!
「一生かかっても弁償できない……」
ボソっと呟いたら嬉しそうな声が聞こえた。
「いいな、それ」
「え?」
「ひかるの身と心を一生くれればいい」
「なんか違いませんか」
「違わないよ。さ、母だ」
いつのまにか、美しい絵画がかかっている廊下を護孝さんにさりげなくエスコートされて歩いていたらしい。
示された方向には、重厚な扉から綺麗な女性が出ていらした。
最敬礼より深くお辞儀をする。
「は、はじめみゃしてっ! みちゅもりひかると申しますっ」
噛んだ。
なんとか姿勢をただしたけれど緊張の面持ちでいる私に、彼のお母様が気さくに話しかけてくださる。
「ようこそ、お待ちしておりました。さ、狭いですけど入ってらして」
あの、このお部屋だけで父の造園事務所くらい大きいですよ?
ソファから立ち上がられた初老のダンディなおじ様が護孝さんのお父様だろうな。
「いらっしゃい。息子から『結婚したい女性をみつけた』と報告されてから、お会いするのを待ちかねていたよ」
ほんとに?
「ひかるさんは多賀見製薬の社長の姪御さんでいらっしゃるんでしょ? 私、御社の基礎化粧品シリーズの大ファンで。化粧水、ずっと使っているのよ」
お義母様がほら、と多賀見から出している化粧水の壜を見せてくださった。
優しい方みたい。
私はほっとした。
「怖がらなくていいのよ」
お義母様がウインクしてくださった。
ぎく。
早々にバレた!