アタシと秘密の王子さま
「お世話になっているんだから、働いて返しま
す」
あたしはそう言って、遅い朝食の後から、
ずっと動き回っていた。

昨夜、賢が自分の生まれた時の話をしてくれた。
心が軽くなったせいなのか、
朝から賢の愛情表現が、激しくなったような気がする。

抱き寄せられて、ささやかれて、そしてキス。
それの繰り返し。
嬉しい。
彼が、あたしのことを好きだと言ってくれることが。

でもね
正直言って、心臓がもたない。

だから、さっきから洗濯機を回して、
台所を片付け、あちこちの埃を払っている。

ソファに座った賢が、そんなあたしをずっと見てる。
< 146 / 167 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop