アタシと秘密の王子さま

王子さまの秘密

あっという間に夏が過ぎ、街には秋の気配が漂っていた。
ベリーヒルズヴィレッジにも、金木犀の甘い香りが漂いはじめていた。

「外国にいる親戚が日本に来るから、食事会をするんだ。ちょっとだけドレスアップして」
賢にそう言われて、ショッピングモールのサロンに連れていかれた。

外国の親戚なんて、初耳…

あたしの左手の薬指には、小さなダイヤの婚約指輪がはまっていた。

婚約してからしばらくは、秘密にしていたけれ
ど、あっという間にバレてしまった。
真弓とは大げんかになり、前からあった壁は、
さらに厚くなってしまった。

でもそれは仕方がないよね。
譲れるものでもないし。
あたしは開き直って、仕事に邁進していた。