アタシと秘密の王子さま
正直言って、柔道に見切りをつけるのはたやすくなかった。

高校、大学は柔道で推薦入学して、日本代表の強化選手に選ばれた。
国際大会にも出たことがある。
もう少し頑張ったら、オリンピック代表に手が届いたかもしれない。

でもそれは、結局夢に終わった。
いくら稽古しても勝てない。
若い選手たちが、どんどん頭角を現してきて、
あたしの中で燃えていた情熱は、いつのまにか消えてしまっていた。

完全な実力社会。力のない者は消えるしかない。
いつかは引退しなくちゃならないんだもの。
それがちょっと早まったに過ぎない。

島田美花さんに出会ったのは、そんな時だった。

今日からあたしの、セカンドキャリアが始まる。
大きく一つ深呼吸して、あたしは家を出た。
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