アタシと秘密の王子さま
山田という同期が、彼女の前で鼻の下を伸ばしているのが、気色悪かった。

何故だか、思わず助けてしまったのだ。
女には関わりたくなかったのに。
握手まで求めてしまった。
俺としたことが…

彼女は強かった。
鋭い足さばき、組み手争いの速さ。
山田と早川は軽量級の選手とはいえ、男子を軽々と背負いで投げるのには驚いた。
テレビの画面で見るのとは違う、痺れるような緊張感。溌剌とした表情に思わず目を奪われた。

握った手は、やっぱり小さかった。
伏せた目、長い睫毛、ゆっくりな呼吸…
ピリッとした緊張感が走り、一瞬で深い集中に入ったのがわかった。

勝負の瞬間、彼女の目が大きく開いた。

どくん…
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