アタシと秘密の王子さま
盛大な拍手が響く。
「大内刈り、一本」
拍手をしながら美花さんが立ち上がり、面白そうに宣言した。

「ゴメン鳥越くん、すっごく絶妙な間合いだったから、とっさに技かけちゃった」
小林が申し訳なさそうな顔で、俺を覗き込んだ。

「おれ、柔道はできないんだけど」
「ほんっと、ごめんなさい」
小林が手を差し伸べてくれた。

試合や稽古では、ごく普通の行為だ。
俺はためらわずに、その手に応える。
小さな手に引き上げられると、小林の背は俺の胸辺りまでしかない。
今まで向かい合って稽古をしていたのに、改めて彼女の小ささを実感する。

この小さな体が、俺から一本取っちゃったわけ?

「次はやられないからな」
俺は強がる。
「覚えとくから安心して」
汗で輝く肌。満面の笑顔。
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