アタシと秘密の王子さま
小林の連絡先を知りたかった。
今まで、女の連絡先を知りたいなんて思ったことなかったのに。
あーあ、こんなの俺らしくない。
仕方がない…

「小林、俺とも連絡先交換してよ」
山田と早川の間に割って入り、俺は努めて明るく話しかけた。
待っていても、彼女はきっと話しかけては来ないだろうから。

えっ、と驚いたような顔をして、彼女がおれを見上げた。
稽古中の、溌剌とした笑顔が消えてしまっているが残念に思えた。

「連絡先」
にっこり…笑えていると思う。
「うん、いいよ」
スマホに『小林あかね』の名前が、すぐに登録された。

「ありがと」
「どうも」と、なぜか彼女はそっけなかった。
それだけで、心がずしっと重くなる。
「じゃ、お先に」
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